給与を勝手に引き下げられた
一方的な給与引き下げは原則無効
「自分は同意をしていないのに、給与を一方的に引き下げられた!」
このような相談を受けることは多いのですが、給与は、労働者の生活の基盤となるものですから、労働者の同意を得ずになされた一方的な減額は、原則として無効となります。労働者は、支払われなかった給与の差額を使用者に請求することが可能です。
一方で、労働契約も契約である以上、労働者の同意を得た給与の引き下げは有効です。ただし、その同意に、詐欺、強迫、錯誤などの瑕疵があるような場合は、無効となります。また、同意の意思表示が、労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認められる合理的な理由が客観的に存在しない場合、その同意は効力を生じないとされるケースもあります。
なお、給与の引き下げについて、労働者が明示的に同意をしていなかったとしても、引き下げ後に特に異議を述べることなく、一定期間労働を続けているような場合は、給与の引き下げにつき、黙示の同意があったと認定されてしまうケースもあるため、注意が必要です。
もし、会社から給与引き下げについて同意するよう要求されても、労働者には、その場で回答する義務はありません。持ち帰って検討する旨を伝えた上で、弁護士などの専門家にご相談ください。
就業規則の変更による場合
また、労働者の個別の同意を得るのではなく、就業規則を変更することにより、給与の引き下げが行われる場合もあります。労働者と合意することなく、就業規則の変更によって、労働者にとって不利な労働条件に変更することはできないのが原則です。もっとも、例外的に、就業規則の変更が合理的であり、かつ、変更後の就業規則が労働者に周知されている場合には、労働者の合意がなくても、労働条件を不利益に変更することが可能とされています。
就業規則変更による給与の引き下げの有効性については、専門的な判断が必要となりますので、このようなケースでも、是非一度ご相談ください。