連日の長時間労働が原因でうつ病になりました。このような場合でも労災は認められるのでしょうか。
うつ病などの精神障害は、外部からのストレスとそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。
そして、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断される場合には、発病した精神障害が労災として認められます。
精神障害が労災として認定されるための要件は、以下の3点です(2019年4月時点)。
(1)対象となるうつ病などの精神障害を発病していること
(2)発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷(ストレス)が認められること
(3)業務以外に発病の要因(業務以外の心理的負荷や個体側要因)がないこと
発病の原因となるストレスとしては、パワハラや転勤など、様々な要因が上げられますが、長時間労働との関係では、発病直前1か月に概ね160時間以上の時間外労働があるようなケースや、2カ月連続して月120時間、3か月連続して月100時間以上の時間外労働があるようなケースでは、それだけで「業務による強い心理的負荷」が認められる、とされています。
また、時間外労働がそれに満たない場合でも、例えば他のストレス要因(事故、ミス、パワハラなど)がある時に、その前後に月100時間の時間外労働があるような場合、心理的負荷の強さを補強する要素として考えることができる、とされています。
そして、精神障害を発症した方が自殺してしまったような場合に、精神障害の発症の原因が仕事上のストレスにあるといえれば、自殺は仕事が原因であり、労災の対象になるものとされています。
なお、労働基準監督署などの行政機関から、業務外と判断され不支給決定が出たとしても、必ずしも諦める必要はありません。一般に、行政段階よりも裁判所の方が、精神障害の業務上認定を広く認めている傾向にあります。したがって、裁判によって行政の判断が覆されることも、十分にあり得ます。
うつ病などの精神障害の労災認定においては、①精神障害を発病したといえるか(特に自殺の事案などでは、病院への通院歴がないというケースもあります)、②発病時期の特定(発病前6ヶ月の出来事が原則として対象となります)、③ストレス要因の心理的負荷の強さとその裏付け(長時間労働・ハラスメントなどの立証資料の収集)、④既往症や業務外原因の有無など、様々な点が問題になります。
したがって、できる限り、労働問題に精通した弁護士に相談することが望ましいでしょう。