7年前に1年契約の社員として入社し、毎年契約を更新してきましたが、次年度の契約は更新しないと言われました。退職するしかないのでしょうか。
雇用期間の定めのある労働契約は、雇用期間の満了によって終了するのが原則です。
しかし、このような原則を貫くと、労働者の地位が極めて不安定になってしまいます。そのため、雇用期間が満了した時に会社が契約の更新をしないで契約を打ち切る、いわゆる「雇止め」には、一定の制限があります(「雇止め法理」)。
では、どのような場合に雇止めは許されないのでしょうか。
労働契約法19条は、以下の①~③の各条件を満たす場合には、雇止めは許されないと定めています。
① 期間の定めのある労働契約が反復更新されていて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合や、労働者において期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合
② 労働者が期間満了後も会社で働きたいという意思を表示していること
③ 使用者による雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき
①の要件について、これまでの裁判例や通達によれば、業務の客観的内容(業務の内容が恒常的か臨時的か、基幹的か補助的か)、更新の回数、雇用の通算期間、契約更新の手続・実態(更新手続が厳格か、形式的なものにすぎないか)、雇用継続の期待を抱かせる使用者の言動の有無、労働者の雇用継続に対する期待の相当性(同様の地位にある労働者の従来の雇止めの状況など)といった事情を総合考慮して、個々の事案に応じた判断がなされることになります。
そして、①②の要件を満たすようなケースでは、解雇の場合と同様に、雇止めの必要性・相当性があるかどうかという判断を行い(③の要件)、雇止めに値するような事情が認められなければ、雇止めは無効です。
雇止めが無効と判断されれば、従前の契約の内容である労働条件と同一の労働条件で、期間の定めのない労働契約が更新される、ということになります。
相談者のケースのように、7年間という長期にわたって契約が更新されてきたようなケースでは、更新手続の実態や使用者の言動などその他の事情によっては、①の要件を満たす可能性は十分にあるでしょう。もっとも、この点は専門的な判断になりますので、弁護士に一度ご相談いただくことをお勧めします。
なお、平成25年4月1日以降に締結・更新された労働契約から計算して、期間の定めのある労働契約が、5年を超えて反復更新された場合、労働者には、期間の定めのある労働契約を期間の定めのない労働契約に転換させる権利(無期転換申込権)が付与されるものとされています(労働契約法18条)。
すなわち、期間の定めのある労働契約が5年を超えて反復更新されていれば、労働者が、現在の契約期間が満了するまでの間に、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをすることによって、契約期間満了の翌日から、期間の定めのない労働契約が成立することになります。
期間の定めのない労働契約は、解雇の有効要件を満たさない限り、使用者が一方的に解消することはできませんので、労働者としては、安定した地位を確保して働くことができるようになるのです。
ただし、転換後の労働条件は、「現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件」であるとされていますので、いわゆる正社員と同一の労働条件となるものではありません。