何度会社に催促しても離職票を送ってもらえず、失業保険の手続ができません。どうすればよいでしょうか。
1 事業主は速やかに離職票を交付すべき
事業主は、労働者が退職した場合、その翌日から起算して10日以内に、離職証明書をハローワークに提出しなければなりません。
そして、離職証明書提出後、ハローワークから事業主に離職票が交付されます。離職票は、失業保険給付の受給手続に必要とされていますので、事業主は、速やかに離職者に離職票を交付すべきであり、このような手続を行うことは、事業主の義務とされています。
雇用保険法には、事業主は離職票の交付を拒むことはできないことが明記され、離職票の交付を拒んだ場合には、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されることになっています。
このように、事業主が理由なく離職票を交付しないことは違法であり、場合によっては刑事罰や損害賠償の対象となるのです。
2 なぜ離職票を交付しないのか?
このように事業主としての義務であるにもかかわらず、なぜ離職票が交付されないことがあるのでしょうか。
まず、離職票が必要なことをご自身が事業主に伝えていないことが考えられます。通常、退職時には事業主から離職票が必要かどうかを確認しますが、離職者の方から離職票が必要であることを事業主に伝えないと、手続が進まない場合もあり得ます。退職後すぐに就職するなど失業保険を受給しない場合には、離職票は不要であるからです。
また、小さい会社では、退職時の手続に慣れておらず、離職票の交付に向けた手続を失念していることもあり得ます。ハローワークが繁忙期で、ハローワークの交付手続が遅れているという可能性もあります。
これらの場合には、事業主に対して離職票の交付を要求すれば、通常は手続を進めてもらうことができます。
これに対し、事業主が意図的に離職票の交付を拒んでいることも考えられます。特に、退職時に労使間でトラブルになっているような場合には、離職者への嫌がらせ目的で、事業主が意図的に離職票の交付を拒むこともないとは言い切れません。
このようなコンプライアンス意識の低い事業主の場合ですと、離職票の問題だけにとどまらず、残業代の未払いなど、他の労働問題も発生しているかもしれません。
3 離職票が交付されない場合どうすればよいか?
事業主が離職手続を行わない場合であっても、ハローワークの最初の受付の手続は可能です。ハローワークから会社に催促をしてもらうなどして、支給決定が出るまでに離職票が交付されれば、失業保険を受給することが可能です。
それでも事業主が離職手続を行わない場合には、離職者は、厚生労働大臣に対し、「被保険者でなくなったこと」の確認を請求することができます。この確認処分があった場合には、ハローワークは、離職者の請求により、離職票を交付することとされています。
このような制度がありますので、事業主に対して、離職票の交付に関する手続を行うよう要求しても、聞き入れられない場合には、事業主の所在地を管轄するハローワークに申し出て、相談すると良いでしょう。
4 残業代未払い等の労働問題は発生していませんか?
離職票とは離れますが、離職票の交付を拒むような会社は、コンプライアンス意識が低いことが想定されますので、残業代未払いなど、他の労働問題が発生していることもあります。
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