会社からの転勤命令には従わなければならないのでしょうか。
転勤命令の労働契約上の根拠
会社は、就業規則などに転勤命令の根拠が定められていれば、業務の必要性に応じて、労働契約に勤務地を限定する内容の特約がない限り、労働者に対して転勤(配転)を命じることができるとされています。
そのため、基本的には、労働者は会社からの転勤命令には従わなければならないと考えられます。
もっとも、会社と労働者の間の労働契約において、勤務地を限定する内容の特約がある場合には、会社はその労働者に対して転勤命令を出すことはできません。転勤に伴い職種も変わる場合には、職種を限定する内容の特約がある場合も同様です。
権利の濫用
また、会社が転勤命令権を行使することが権利の濫用に当たる場合には、転勤命令は無効となります。
権利の濫用に当たるか否かは、①業務上の必要性、②対象労働者の人選の合理性、③不当な動機・目的の有無、④労働者が被る不利益の程度、⑤適正手続を欠いていないかなどを考慮要素として判断されています。
転勤命令が権利濫用として無効の場合には、労働者は転勤命令に従う必要はありません。もし転勤命令に従わないことで懲戒処分等の不利益を受けた場合には、その処分も無効となります。
現在の裁判例などの傾向としては、業務上の必要性についてはかなり広く認めています。また、単身赴任により家庭生活に影響があるといった程度の不利益は、基本的には労働者が受け入れるべきものとされるケースが多いです。他方で、本人・家族の病気や介護の必要性などのやむにやまれぬ事情がある場合には、権利の濫用を認めているケースも数多くあります。
どのように対応すべきか
したがって、ご相談のケースでは、まず、会社との間で勤務地を埼玉県に限定するなどの特約があるかどうかを確認する必要があります。
また、勤務地・職種の限定はないとしても、会社に対し、業務上の必要性について説明を求めるとともに、転勤に応じられない事情を会社に十分説明し、その上で、転勤を避けることはできないのか、他の代替手段がないかどうかについて、会社と話し合いをしましょう。
話し合いが困難な場合には、その有効性を裁判(訴訟、労働審判、仮処分)で争うことも考えられます。
転勤命令の有効性に関する問題は、判断が微妙なケースもあり、専門的な法的知識が必要になります。お悩みの際は、是非一度、弁護士にご相談ください。