通勤災害が労災として認められるのはどのような場合ですか。
労災保険が支給される「通勤災害」とは、労働者が①就業に関し、②住居と就業の場所等との間を、③合理的な経路及び方法により往復する途上における事故であり、④業務の性質を有しないものとされています。
また、⑤移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤とは認められません。
以下、詳しくご説明します。
①就業に関する移動であること
通勤災害に当たるためには、移動行為が業務に就くため、または業務を終えたことにより行われるものであることが必要です。
②住居と就業の場所等との間の移動であること
通勤災害と認められるのは、次のいずれかの移動に当たる場合です。
・住居と就業の場所との間の往復
・就業の場所から他の就業の場所への移動
・転勤に伴う住居間の移動
③「合理的な経路及び方法」による移動であること
就業に関する移動の場合に、一般に労働者が用いると認められる経路及び方法をいいます。
合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。また、当日の交通事情により迂回する場合、マイカー通勤者が貸切りの車庫を経由する場合、通勤のためにやむを得ずとる経路も、合理的な経路となります。他方、特段の合理的な理由もなく、著しい遠回りとなる経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
次に、合理的な方法については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通手段であれば、平常用いているかどうかにかかわらず、一般に合理的な方法となります。
④業務の性質を有しないものであること
①~③の要件をみたす移動であっても、その行為が業務の性質を有するものである場合(事業主の提供する専用交通機関を利用する場合、緊急用務のため休日に呼出しを受けて緊急出動する場合など)は、「通勤災害」ではなく、「業務災害」に当たることになります(両者は給付内容や要件効果に若干の違いがあります)。
⑤移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合
逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。
例えば、途中で買い物をするために、回り道をしてお店に寄る途中で発生した事故の場合には、通勤災害とは認められません。
ただし、通勤の途中で経路近くの公衆便所を使用する場合や、経路上の店でタバコやジュースを購入する場合など、ささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。
通勤の途中で逸脱又は中断があると、その後は原則として通勤とはなりません。もっとも、例外的に、日用品の購入、職業訓練、選挙権の行使、診察・治療等の日常生活上必要な行為を、最小限度の範囲で行う場合には、「逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後」は、再び通勤となります。
以上のように、通勤災害と認められるかどうかについては、法的な解釈が必要であり、一般の方にはなかなか分からない部分があるかと思います。是非一度、専門家に相談することをおすすめします。