労働現場での死亡事故に関し、使用者や現場元請業者を相手に損害賠償訴訟を提起し、労災保険では填補されない損害について賠償金を取得した事例
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事案の概要
一人親方として現場で塗装業務に従事していた相談者の夫が、現場で発生したガス吸引事故が原因で死亡する労災事故が発生しました。
労災の認定がなされて労災保険上の保険給付がなされましたが、慰謝料その他労災によっては填補されない損害について、相談者が直上の使用者、その上の元請業者に責任追及したところ、言を左右し明確な補償には応じようとはしませんでした。
そこで、当事務所の弁護士が、死亡した労働者の妻と未成年の子どもから相談を受け、雇用者や元請けに対する損害賠償請求の依頼を受けることになりました。
解決に至るまで
訴訟では、直上の使用者の主張は、「亡くなった労働者が一人親方であって自分は使用者ではない」あるいは「自殺である」と主張して責任を争ってきました。
一方で元請業者も「当社が雇用していた人間ではないし、現場の事故について責任を負う立場ではない」と主張して責任の所在を争ってきました。
そこで、当方では、刑事記録の閲覧・謄写をし、さらに事情を知る関係者にコンタクトを取って現場の状況や労働の実態を把握し、これの実態を主張立証することに務めました。
直上の使用者に対しては、
①労働時間の拘束や
②使用していた道具の所有者が使用者であったこと、
③その他身につけていた作業着の刺繍が使用者の名称であった点などを指摘し、
雇用契約があったことは明らかであるし、自殺という主張にも理由がないことを主張立証しました。
また、元請けに対しては、建設業法等の要求する現場の安全体制が確立されていなかったことや、実際には元請けの人間が直接相談者夫に対して指示をしていることもあったことを主張立証しました。
その結果、当方の主張は認められ、使用者らに対しては連帯して数千万円の賠償を命じる判決が言い渡されました。
その後、使用者、元請両者が控訴したため、事件は高裁へと移りましたが、高裁では元請けとの間では和解が成立し、相当額の和解金を分割で受領することになりました。
これに対して、支払いが困難であるから破産をする等の主張をして和解に応じなかった使用者については、支払を命じる判決が言い渡されました。
使用者は判決に従った支払に応じず、破産の申立もしませんでしたが、使用者が廃業後、勤務している先が判明したため、その給与を差し押さえることで継続的に支払をうけることになりました。
解決のポイント
・元請け、下請け、孫請け等、現場の管理者が複雑な形態になっている場合には、直接の使用者以外にも労災についての責任を追求できる可能性があります。
・労災保険の補償によっては補填されない損害については、別途使用者などに請求できることがあります。