会社を懲戒解雇されました。退職金をもらうことはできないのでしょうか。
Q. 先日、30年間勤めた会社を懲戒解雇されました。就業規則には退職金の規程がありますが、会社は「懲戒解雇したのだから、退職金は支払わない」と言っています。解雇自体はやむを得ないと思っているのですが、私は退職金をもらうことはできないのでしょうか。
A. 労働基準法には、退職金請求権を直接根拠づける規定がないため、退職金請求権が認められるためには、就業規則等に退職金の定めが設けられている必要がありますが、相談者の勤務先の就業規則には規程があるということですので、この点は問題ありません。
また、相談者に対する懲戒解雇が法律上有効であることを前提にお答えします。
懲戒解雇した労働者に対し、退職金を不支給としたり、減額することについて、判例は、「一定の要件が満たされる場合は、不支給や減額が許される」という立場をとっています。
その要件とは、原則として以下の通りです。
①懲戒解雇の場合に退職金を不支給・減額することが、就業規則等に明記されていること。
②①の退職金の不支給・減額条項が、懲戒解雇をした時点で有効に成立していること。
③労働者にこれまで会社に勤続してきた功績を抹消してしまう程度の「著しく信義に反する行為」があること。
③のような要件が必要とされているのは、退職金は、賃金の後払い的性質があり、賃金と同様の保護を受けるべきとされているため、不支給としてもやむを得ないと思われるだけの理由がなければならないからです。過去の裁判例では、私生活での痴漢行為を理由に退職した労働者について、退職金の3割を認容したものがあります。
したがって、上記3つの要件が一つでも満たされていないのであれば、相談者は勤務先 に退職金を(一部)請求できる可能性があります。
特に、③の要件は、法的解釈を伴うものですので、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。