一刻も早く会社を辞めたいのですが、退職を申し出ても、会社は退職を認めてくれません。どうしたら良いのでしょうか。

 労働者には、退職の自由があります。基本的には、辞めることができるケースが大半です。

 まず、雇用期間を特に定めていない場合(新卒の正社員の大半はこれに当たるでしょう)には、労働者による退職の意思表示が使用者に到達してから2週間の経過によって、労働契約は終了します。すなわち、原則として、退職に当たっては、2週間前の予告は必要ですが、会社の承認や退職理由は必要ではありません。

 ここでは、退職の意思表示をいつしたのかが曖昧にならないようにすることが大切です。使用者が退職の申し入れを受け付けないような場合には、文書などを用いて(配達証明付きの内容証明郵便を利用するとより確実です)、使用者に対して退職の意思を表明したことや、その日付が、明確な形で残るようにした方が良いでしょう。

 一方、雇用期間の定めのある労働契約の場合には、期間途中に労働者から退職をするためには、原則として「やむを得ない事由」が必要とされています。「やむを得ない事由」が認められるかどうかの判断は事案によりますが、会社が賃金を支払ってくれない場合や、職場環境が劣悪で心身に危険を生じている場合など、退職にある程度の正当性があれば、「やむを得ない事由」が認められる可能性は高いでしょう。
 
 また、一部の労働者(専門的知識を有する労働者や60歳以上の労働者は除きます)については、期間の定めのある労働契約の場合であっても、契約の初日から1年経過後は、「やむを得ない事由」を必要とせず、いつでも退職をすることができます。

 なお、会社の意思に反して退職する場合に、会社から損害賠償請求をされるのではないか、というご相談を受けることがよくあります。
 確かに、法律上は、会社に損害が発生した場合には、その責任を問われる可能性があります。
 もっとも、実際には、そのような責任を負うことは非常に稀です。退職者が出たことで生じた損害を会社が立証することは現実的には困難ですし、退職者が出たような場合でも業務に支障が出ないように調整することが、会社の責務であるともいえます。例えば、会社の存続がかかった重大なプロジェクトのリーダーを任されていたのに、重要な会議の前日に、引継ぎをせずに突然ばっくれてしまったなど、限定されたケースでしか実際には問題になりません。
 したがって、会社から「損害賠償を請求する」などと言われたとしても、必ずしも認められるわけではありません。ご不安な点がございましたら、一度弁護士にご相談ください。

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