会社とのトラブルを解決する手段としては、どのようなものがありますか。
労働紛争を解決するために利用できる機関や手続としては、以下のように、様々なものがあります。
(1)労働基準監督署への通報
労働基準監督署には、相談窓口が設置されており、企業が労働基準法 を守っていないという通報(通報は匿名でも可能です)を受けて、必要な調査を行い、企業に対する指導も行います。
悪質な法律違反については、事業場の責任者を逮捕したり、刑事事件化することもあります。
もっとも、企業が労働基準法を守っていないことの証拠がないと動いてくれないこともあります。また、労働基準監督署が対象としているのは企業の労働基準法違反行為のため、解雇の有効性や、パワハラ・セクハラの問題などには、対処することができません。
(2)労働局のあっせん手続
各都道府県の労働局には、弁護士等の学識経験者で構成されるあっせん委員が入り、話し合いを行うあっせん手続が設けられており、誰でも無料で利用することができます。
もっとも、当事者には、あっせん手続への出席義務はなく、話し合いの結果出されるあっせん案を受け入れる義務もないため、紛争解決の実効性には欠ける面があります。
(3)民事調停
簡易裁判所には、社会生活上の知識経験や専門的知識を有する人から選ばれた調停委員が仲介して、当事者双方の言い分を聞きながら合意による解決を目指す調停という手続が設けられています。 誰でも、簡便かつ安価に利用できる手続で、合意が成立した場合には裁判による判決と同じ効力を持ちます。
もっとも、相手方が出頭しなかったり、合意に至らなかった場合には、手続が終了してしまいます。
(4)少額訴訟
簡易裁判所において、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る特別な訴訟手続です。
単純な未払賃金の請求などの場合に利用されることが多く、和解や判決によって強制執行が可能になります。簡易迅速な審理が行われるため、時間的・金銭的負担は少なくて済みます。
(5)労働審判
裁判官と、労働関係の専門的な知識経験を有する労働審判員2名で構成された労働審判委員会が、個別労働紛争を、原則として3回以内の期日で審理し、当事者間の合意による解決ができるよう仲介するとともに、合意による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図る労働審判を行うという紛争解決手続です。
訴訟になった場合、解決まで1年近くかかってしまうことがありますが、労働審判は原則として3回以内の期日で結論を出すことになるので、時間的・金銭的な負担は比較的少なくて済みます。
もっとも、労働審判では、原則として3回以内の期日で審理が終結するため、当事者は、早期に入念な証拠の収集と論拠の構築を行い、的確な主張・立証をしていくことが重要であり、法律の専門家である弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
労働審判に対して当事者から異議の申立てがあれば、労働審判はその効力を失い、訴訟に移行します。
(6)民事訴訟
複雑な事案や、相手方との対立が深い事案でも、判決という形で最終的な解決が得られ、また強制執行等の強い効力を有するという点で、民事訴訟は労働紛争の解決手段として重要です。
もっとも、時間的・金銭的な負担は大きく、また、訴訟手続は専門的であるため、法律の専門家である弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
迷ったら弁護士に相談を
この他にも、裁判所の仮処分手続や、先取特権の実行、労働組合(ユニオン)に加入しての団体交渉など、労働者が利用できる機関・手続には様々なものがあり、事案によっても適切な手続は異なります。
どのように動いていけば良いのか迷った場合には、是非一度、弁護士にご相談ください。